はじめに
どうもウルスです。詐欺師の事例各論の初回は取り込み詐欺について。なんというか本当にいろんな詐欺の手法があるんですね。恐ろしい。でも一つずつコツコツと学んでいきましょう。この一歩踏み込む姿勢が防御力向上には大切なはず!では早速いきましょう!
そして本ページの文字数はまさかの10400文字!
本1冊が大体10万文字程度なのでこれを10回繰り返したら大体ですが1冊完成という感じですね。あ、また余談でした。失礼。では音声はこちら!音声に本ページの長い物語は含まれておりません。この物語はオリジナル作品です。
取り込み詐欺とは
ポイント
取り込み詐欺(とりこみさぎ)は、代金後払いで商品を注文し、商品を受け取るも、代金を支払わず商品を詐取するもの。詐欺の手法のひとつ。手形を取り込む手口もある。
引用:wikipedia
ふむふむ。少額取引で安心させて最後がぶっと商品だけ受け取っていなくなる。これまでしっかりしたやりとりをしていても、一番最後にいなくなってしまったら対応できない。こわいですねー。そして換金がすぐにできる商品が目をつけられやすい。なるほど。
[物語]消えた1000枚の絵画
時は2022年。10000枚のNFT絵画プロジェクトがいくつか成功を収め少人数で数百億円規模の取引をする時代。若き青年ジェネラも成功を夢見る一人でした。そんな彼の物語を見ていきましょう。
情熱の青年ジェネラ
ジェネラはNFTARTが盛り上がっているというニュースを見ていました。え、一枚数億円!?この画像が!?。俺もやってみようかな。イラストは得意だし、何より今後この業界は盛り上がりそうだし一旗上げてやるぞ!自分で絵を売ったことなんてないからまずは一枚売ることに専念しよう。
どうやって作るんだろ。ほうほうipadで作るのか。あれ、スマホでも頑張れば作れるのか。大変だけどお金もないしスマホで作り始めよう。ほうほう無料のアプリがあるのね。これか、色の変更はと、線はもう少し太くしたいな。こうして青年は名も無いアーティストとしての活動を始めました。
初めての売上
一つ目の作品が完成。よし。売り出してみよう。なになに。このサイトに登録してと、ウォレットをつないで販売開始と。まぁ最初だし安目にしておくか。そうだなぁ千円くらいかな。ブランド名はそうだな。ジェネラルにしよう。それにしても海外プロジェクトはすごいなー。一瞬で売り切れたとか毎日ニュースになってるからなぁ。俺の作品もいつか売れないかなぁ。
ピロン。売り始めて数日後。一通のメールが来ました。「あなたの商品が売れました。」え。え?。えーーーー!まじで。こんな簡単に売れるの?そりゃあ安かったけどこんなに簡単に売れるなんて。これはきてる。おれにモテ期がきてるぞ。
次の作品もなんと登録後数日で売れました。今度はなんと3千円。皆様もお気づきでしょう。そうです。ジェネラには絵の才能があったのです。宣伝活動も何もしない状態でぽっと出した作品が数日で売れる。見る人が見たらわかる才能が気づかれるのに時間はかかりませんでした。
海外からのDM
ある日海外から一通のDMが届きました。内容はこうです。あなたの才能に惚れました。私たちは秘密裏に素晴らしいプロジェクトを準備しています。海外の有名投資家も参画しているプロジェクトで、あなたの才能がどのくらいの価値があるか確認したいので、一つ私たち向けに絵を描いてくれませんか。一枚で一万円お支払いします。あなたの絵にはそれだけの価値がある。
え。まじで。こんなことってあるかね。めちゃくちゃあやしい。そもそも一万円払うって言ってるけど本当かな。でもこれで1万円くれるなら来週のバイトちょっと減らそうかな。一枚描くだけなら試してみるか。google翻訳を駆使してジェネラはこの提案に乗ることにしました。
一枚一万円
ジェネラは完成した絵を依頼主に送りました。拙い英語で、新しい世界に一つだけの作品です。お納めください。と。もちろん依頼主からは秘密裏に動いているプロジェクトと言われているのでオープンな場に情報は出していません。今回はとても集中して描いたので、制作にかかった時間は一枚約3時間。さて依頼主からの返答はあるのでしょうか。
ジェネラが画像を送って数十分後。依頼主から返信が来ました。やはり君の絵は最高だ。ウォレットに約束の仮想通貨を振り込んだ。確認してくれ。と。え。はやい。しかもめちゃくちゃ褒めてくれてる。えー。仮想通貨も本当に入っている。やば。あのストックももしかしたら買ってくれるのかな。そんな淡い期待をしているジェネラでした。
プロジェクトメンバー試験
その期待はある意味良い方向に外れました。依頼主から次の相談が来ました。ジェネラ君の作品はやはり素晴らしい。本格的に我々のチームに入らないか。具体的には我々のプロジェクトはいくつかの優秀な作家の絵を集めた10000枚の作品郡をまとめたブランドを作り大体的にローンチすることだ。投資家からの期待も大きく、既に数億円の資金が集まっている。
このプロジェクトメンバーに本格的に君を推薦しようと思っている。そのために次は10枚の絵を作ってみてくれないか。少し多いが今回は一枚3万円でお願いしたい。つまり合計で30万円だ。
え、まじで言ってるの。超モテ期来てるじゃん。30万あったら来月バイトしなくていいじゃん。やるやるもちろんやる。ストックしてたのもあるから数日あればできるよ。前回支払いもしてくれたしこの人本当にすごい人なのかもしれない。でも推薦って言ってたからストック分も含めて最高の作品を作ろう!うでがなるぜ!
そして数日で完成した作品を依頼主に送ったジェネラ。受験勉強依頼のドキドキで夜も眠れません。あぁ合格したらどうなるんだろ。きっともっと描いてって言われるよなー。あの有名アーティストみたいにインタビュー受けたりするのかぁ。ジェネラの夢は膨らむばかり。
果たして結果は
「おめでとう。合格だ。」依頼主からのDMの冒頭にはこう書かれていました。そしてウォレットにはピッタリ30万円分の仮想通貨が増えていました。そうです。ジェネラは晴れてこのプロジェクトのメンバーとして認められたのです。とgoogle翻訳には書いてありました。MTGも他のメンバーの情報もほとんど知らないジェネラですが、依頼主のことは信じきっていました。なぜなら彼はここ数回の取引でしっかりと自分の価値を認めスムーズな支払いをしていたのですから。
この30万円を使ってジェネラは最新タブレットと電子ペンを買いました。こっちの方が作業効率がいいからな。これでさらに大量生産が可能になったぜ。ジェネラのSNSは水面化でこんなすごいことが起きているのに、ここ最近書かれたのは最新タブレットGET。この一言だけでした。
重要ミッション
感動の合格発表から数日後、依頼主から超大型ミッションが届きました。そうです。ジェネラの本領が発揮される時です。今回の依頼は桁が違います。なんと今回の依頼は1000枚。NFT大型プロジェクトだと10000枚などがありますが、今回は全てハンドメイド作品です。
え、一枚5万円。それはやばい。1000枚だから500万円か!外車が買えるお値段。あれ、いやいやいやいや。1枚5万円で1000枚ってことは0がもう一個多いじゃん。え!5000万円。あれ、生涯年収って確か2億円くらいだったよな。それの4分の1!外車じゃなくてマンションが買えるお値段!うわーこれはやばい。受験合格どころではない喜び。
ジェネラがこの日飲み過ぎてしまったことは大目に見てあげましょう。
眠れない日々
完全にスイッチが入ったジェネラの行動は徹底していました。バイト先には頭を下げて即日終了。寝る時以外は絵を描く日々。土日も休みなく絵を描きました。来る日も来る日も絵を描き続けました。少ない日でも一日8枚。多い日はなんと15枚もの絵を描きました。平均すると一日10枚ちょっと。期間にして約三ヶ月で1000枚の絵を描き上げました。
彼が作った絵は全てハンドメイド。完全なる一点もの。しかもどれも品質が高く。温かみを感じられる作品でした。最後の一枚を描き終える時に彼が考えていたこと。それはこのプロジェクトが終わったら長めの休みを取ろう。ゆっくり温泉でも行こう。もう疲れたよパトラッシュ。と言いたくなるくらいに毎日絵を描き続ける日々でした。
やりきった朝日
最後の絵が完成したのは朝方でした。今日もまた夜中まで絵を書いてやっと1000枚目が完成。気が遠くなるような時間。一日の休みもなくジェネラはやりきりました。友人や親族の連絡にも最低限の返事のみ。飲み会も遊びも全て断って費やした三ヶ月。俺の才能を見つけれくれてありがとう依頼主。そんなことも考えていました。明るくなる外と朝日を少し眺めて彼は自分の未来は明るいと感じました。
何が彼をここまで掻き立てたのでしょうか。自分の絵が認められたという嬉しい気持ち。もしくは5000万円という大金。一度受けた仕事はやり抜くという思想なのか。何かを明確に定義することはできませんが彼はやりきったのです。最後の一枚を描き終え、依頼主にメールを送ったあとの眠りはこれまでとは違う深い質の高い睡眠でした。でも習慣は怖いですね。ジェネラは夢の中でもまだ絵を描いていたそうです。
誰にも言えない三ヶ月
目が覚めるとなんとも言えないスッキリとした気持ち。今日はいつになくよく寝た。そうすがすがしい気持ちで起きたジェネラでした。そしてタブレットを開け依頼主からのDMを確認しました。やはり信頼のおける依頼主。DMの返信も早い。ジェネラが作品一覧を送ってから数時間後には受け取り確認DMが来ていました。
しかし文面にはいつもと少し違う情報が。素晴らしい作品をありがとう。内容をチェックする。そして今回は金額も大きいので送金には少し時間がかかると思う。他のプロジェクトメンバーの作品も続々と集まっておりこれはもう成功間違いなしと皆言っている。くれぐれもこのプロジェクトのことは誰にも言わないように。
おや。支払日がわからない?そんなことあるかね。ちょっと怪しいなと思いながらも返信をするジェネラ。納品確認ありがとう。ちなみに支払日はいつ頃になりそうでしょうか。お忙しいとは思いますが念のため確認させてください。依頼主からは約三ヶ月後には支払いを行う予定となってる。一時金として30万円振り込んでおいたので確認してほしい。
なるほどね。やはり大型プロジェクトはいろいろあるのね。しかも依頼主30万振り込んでくれてるし安心して待っていてよさそうだな。納品から三ヶ月ってだいぶ支払い先な気もするけどDAOプロジェクトの支払いってこんなものなのかな。海外プロジェクトは契約書もないみたいだし、本当に世界は広いなぁ。あれ、三ヶ月後ってことは貯金もギリギリになっちゃうな。バイトもやめちゃったし。すぐもらえると思ったのにまぁ30万あればなんとかなるか。
約束の日
ジェネラは依頼主からもらった30万で予定していた温泉旅行に行きここ数ヶ月の疲れを癒しました。その後は三ヶ月後には5000万円が入ると信じきっており。手持ちのお金をギリギリまで使ってのんびりした日々を送りました。他のNFTARTの事を調べることもしません。ただただのんびりと過ごしていました。幸運だったのは5000万円が入るからと遊ぶための借金をしなかったこと。
そして約束の日。カレンダーにも赤丸をつけていたので忘れるわけがありません。貯金もそろそろ底を尽きそうなくらいに減り。ジェネラは少し焦っていました。朝からDMを何度もリロードするジェネラ。海外だから時差あるのかな。依頼主起きてるかな。こちらからDMしてみようかな。朝から起きて待っていましたが一向に連絡はきません。
しびれを切らしたジェネラは依頼主にDMをします。お久しぶりです。本日は5000万円の支払日ですね。まだ入金が確認できていませんので手続きが終わったらご連絡ください。お昼に一度DM。しかし返信はなし。いつもなら数時間で返信がくる依頼主ですが、この日は全く反応なし。夜にも追加でDM。ざわざわ。ざわざわ。そして今日が終わる時間になっても返答はなし。ざわざわ。
消えた1000枚の絵
翌朝までジェネラは寝ずにDMを見ていました。が、やはり返信はなし。途中何度かしたDMにも既読すら付きません。ジェネラは依頼主との他の連絡手段は持っていなかったです。そして誰にもこのやりとりは伝えていないのでこのDM以外の連絡手段はありません。そして依頼主が一体誰であるかもジェネラは知りません。
やられた。ジェネラはいろんな可能性を考えましたが、数日後も連絡がないこと。依頼主のSNSアカウントが全く更新されていないこと。他の詐欺事例を調査したり友人に相談したりしてこれは取り込み詐欺という仕組みに近いと知ったこと。
そうです。ジェネラが寝る間も惜しんで3ヶ月を費やして作った渾身の1000点の作品は依頼主に奪われたのです。遡ること一ヶ月。海外ではとあるプロジェクトのボリュームトレードがすごいことになっていました。
大成功プロジェクト
このプロジェクトは完全な匿名チームで運用されており、彼らが見つけた複数の作家の卵の絵をまとめた10000体のプロジェクトでした。作家の名前は明かされない特別プロジェクト。しかしどの作品にも素晴らしい作品で見る人が見たら即買わずにはいられない輝きを放っていました。
そして、このプロジェクトは完全匿名プロジェクトであるにも関わらず、ローンチ後ある特定の投資家層に急激に人気となり、ボリュームトレードは1日単位で世界一位を獲得。誰もが作家の名前を探しましたが自称作家という人は現れるものの、ブランド側からの発信は一切なく、秘密のベールに包まれたプロジェクトとしてさらに人気に火がついていたのでした。
後出しジャンケン
このニュースがジェネラのところに届くまでには時間がかかりました。なぜならジェネラはNFTARTについてはその後情報収集をほとんどしていなかったからです。約束の日のあとも何度か依頼主にDMしましたが結果音沙汰なし。久しぶりに見たSNSで自分の絵が一つ100万円で取引されている事を知ります。
え!これ俺が描いたやつじゃん!1作品100万!しかも最高価格だと1000万になってるのもあるやん!これ最後の日に描いた作品だ!どいういうことだ!俺の絵を返せ!というか依頼主あのやろう。どういうことだ!
彼は自分のSNSでこのことを発表しました。しかし運用されていないSNS。フォローもフォロワーも少ないし日々のやりとりなんて何もしていない。海外のよくわからないアカウントからのいいねが即ついて、その後は誰からもいいねがつかない。数回投稿しましたが毎回同じようなもの。一人だけコメントを書いた人は。それはあなたの感想でしょ。成功プロジェクトが俺のものだって後出しじゃんけんだよ。ってひどい。
証明ができないジレンマ
その後も原画の説明をしたり、依頼主とのDMを公開したりとしましたが一向に反応はなし。消費者庁にも連絡しましたが海外?匿名?NFT?うーん証拠がないとだしルールもないし。と。けんもほろろ。SNS投稿には海外botアカウントからの心ないいいねが数件。そうなんです。この案件は証明ができない。そして相手は匿名だから誰かもわからない。
怒りと憎しみ自己嫌悪に陥ったジェネラ。貯金もそこを尽きバイト先にも再度頭を下げて働き始めたジェネラ。それでも彼の怒りの炎は燃えたままでした。吉野家の並つゆだくに紅しょうがをたくさんかけてほおばりながらジェネラは考えました。
怒りはおさまりませんでしたが、彼は別の事を考えていました。そう。なぜ彼の作品が売れたのか。そして依頼主はなぜ彼に声をかけたのか。
怒りの1000枚おかわり
なぜ彼の作品が売れたのか。なぜ依頼主は彼に声をかけたのか。この問いを一週間ジェネラは考え続けました。たまたま?売れたのはたまたまでも、なぜ自分に10枚も絵を描かせたのか。なぜ自分の絵を1000枚欲しかったのか。依頼主は詐欺師だった。それは正しいのですが、なぜ自分だったのか。ちょろそうに見えたから?でもそんな奴はたくさんいる。自分である必要がない。
しかも30万を二回も支払った。それだけの価値はあったはず。価値がないならそんな大金すら支払わない。自分はどこで騙されたのか。なぜ自分を騙すことにしたのか。なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。
ジェネラがたどり着いた一つの答え。それは「自分の絵画には価値がある」でした。そうです。詐欺師の依頼主がジェネラから奪ったものそれは「絵画の価値」でした。これに気づいたジェネラは覚悟を決めます。そうです。おかわり1000枚。あの過酷な三ヶ月を完全再現し、今度は自分のプロジェクトとして世に出そうと決めたのです。
起業家としての成功
自分で大型プロジェクトを発表する。この経験はジェネラに起業家としての才能を目覚めさせました。もちろんこれまでやったことのない分野における失敗と成長は目まぐるしいものでした。1000枚の絵画を作ることはできても、マーケティング、営業、顧客管理、アフターフォロー、値付け、大型プロジェクトにあるロードマップ、プログラミング、仮想通貨の知識、NFTの知識、詐欺の事例、他のプロジェクトの成功事例と失敗事例。あらゆる分野について調べ実践し経験値を積みました。その過程でできたかけがえのない仲間たち。
そして遂に彼のオリジナルNFTARTブランドがローンチ。作品点数は1000点。結果はどうでしたでしょうか。そうです。大成功。発売後一日でのボリュームトレードは点数が1000点にも関わらず世界三位を獲得。一点当たりの価格は最低300万円。最高額はなんと1億円。前回作品を買った海外投資家の間でもさらにその人気に火がつき、一時はブランドwebサイトがサーバーダウン。こうしてジェネラは一躍時の人となったのでした。
彼の失敗経験そして成功体験は、その後本人の本にまとめられて広く知れ渡ることとなりました。彼は本の最後をこう締めくくっています。
詐欺師は人を騙す悪い人間だ。でも彼らは馬鹿ではない。むしろ賢い。私はあの失敗経験があったから自分の絵の価値に気づくことができた。失敗から目を背けてはいけない。失敗をよく見ること。そこに必ず光はある。
ジェネラ
ちなみに彼の奪われた作品で作られたプロジェクトは一時期のピークを堺にパタリと運営が情報発信を行わなくなりました。事実上のプロジェクト運営者消滅。もちろん計画されていたロードマップも全て実行されないままとなり、急激にそのブランド価値を落とし、結果販売サイトでの運営アカウントは消滅することになりました。作品を奪われた作家たちが集団で情報発信を行なったことも一因だったのかもしれません。購入者にとって幸いだったのは彼らのプロジェクトの作品の取引履歴はインターネット上に永久保存されていたことです。
さらに後日正式に集団訴訟が行われました。この10000点の絵画は誰のものか。この取引履歴はどういう定義をするべきか。この議論は長い間NFT業界を騒がせる事になりました。そして、さらに進むこと2030年。この所有権をめぐりThe EARTH 裁判所(クリプト時代の到来により新しい一つの国となった地球に発足したDAO裁判所。裁判官含めた多くの匿名メンバーで構成。一部には氏名を公表して参加している人もいる)は最終判決として、この画像の所有権は購入者にあるということを公式見解として発表しています。
NFT時代の取り込み詐欺
最終的にジェネラが成功することができてよかったですね。この事例以外にも信用していた人に裏切られ、情熱を込めて作った作品が奪われてしまう。そんな悲しい出来事に遭われた方もいるかもしれませんね。でもやはり失敗から目を背けてはいけない。そして、失敗しないよう注意深く行動する。これは常に心がけたいですね。
NFTによりデジタルデータの所有の概念が変わりつつあります。でも、ART作品であればその過程を公開していなかったりすると、本当は誰が作ったのかを証明することは難しいかもしれません。また、デジタル化に伴い商品の定義や価値が変わってきているのも事実です。特にNFTプロジェクトは水面下で準備をし、華々しくローンチするような物がたくさん。その一大プロジェクトの一員となることができた。それは素晴らしいことです。でもチームメンバーが全員匿名だったりすると少し不安ですね。オープンにすることで歴史を作りそれを元に信用を作るという方法もありかもしれませんね。
現代はNFTARTが盛り上がっていますが、今後はメタバース上でのアバターや建物、その他NFT関連サービスが流行するでしょう。今回の取り込み詐欺には「注文」「納品」「後払い」この構造がありました。この形式の特に後払いの取引には取り込み詐欺のリスクが潜んでいるでしょう。あなたの大切な時間を投資した作品が奪われてしまわないように、今そして今後のプロジェクト参加の際には注意頂けましたら幸いです。
取り込み詐欺の対策
取り込み詐欺に合わないためにはどうすれば良いのでしょうか。もしくはあった場合の被害を最小にするには。そんな視点をいくつかまとめようと思います。ポイントは「注文」「納品」「制作コスト」「後払い」そして「取引ボリュームの変化」にあります。
過去事例を見ても、ポイントとなるのは「最後に大きな取引を仕掛ける」だから被害が大きくなる。この視点をケアすることが一番の対抗策のように感じました。信用度をコントロールすることは少し難しい詐欺とも言えますのが対策をリスト化するとしたら下記かと思います。
取り込み詐欺の対策
1.納品者視点では後払いより先払いor即時取引
2.相手の与信は最初の取引時に行う
3.取引ボリュームが増える時は要注意
どうすればよかったのか
もちろん自分と相手の力関係やその他様々な要素が絡みあっての取引ですので何が正解ということはありません。ある時には悪手に見えたものが長い目で見ると最善手だったということはよくあります。あらゆるものは表裏一体。です。その絶妙なバランスの上で我々はビジネスをしています。
とはいえ今回のジェネラの対応を振り返ってみると、やはり気づきもしくは交渉の余地がなかったかというと、最後の取引を小分けにするなど、終わった後だから言えることですが、被害を少なくするアプローチはいくつかあったように思います。交渉は時として交渉決裂を生むリスクを含みますが、今後の長い信頼関係を考えると双方納得のいく形で組むことが長いお取引をする上では大切な気もしますね。
起業家として更なる飛躍を遂げたジェネラが、当時の依頼人からの最後の5000万円のDMにどう返信するかは気になりますね。少しだけ私が想像するならば下記のような形になるのかなと思います。
依頼主さま
この度は作品1000点1点5万円という貴重なチャンスを頂けたこと光栄に思います。
つきましてはこちら是非お受けしたいと考えておりまして、当方からもいくつか条件を提示させて頂けますと幸いです。
1.100点ずつ納品。支払いは翌週金曜日中。
2.現状依頼主様としかやりとりをしていないため他の方とのzoom mtgを設定。
3.他の作家様のお名前含めプロジェクト詳細情報を提示。NDA契約書にはもちろんサインします。以上となります。依頼主様の今後の益々のご発展お祈りしております。
ジェネラ
防御力の高い行動とは何か
もちろん今回の物語はフィクションです。でも、この契約内容であればジェネラは100点ずつ。500万円ずつの振り込みを確認することができます。つまり当初の1000点5000万円に対してリスクを10分の1にして、途中の支払いがなければ次の絵を描かないという選択肢が増えたことになります。やはり成長したジェネラは行動が違いますね。きっとこの交渉と同時に相手の与信調査も別ルートで行っていることでしょう。
もしかしたら既に相手の情報を知り、依頼主が他で働いた詐欺の被害者と接触して彼らのパターンを認識しているのかもしれませんね。いずれにしてもリスクを抑えつつ交渉を進める。言われたことだけではなく自分でも考え主張する。この動きができているので今後ジェネラはもし詐欺に合ったとしても被害は最小限にと留めることができそうですね。
この匿名性の高い時代に、相手の事を全て知る事は難しいのかもしれませんね。であれば、一定の損切りは覚悟しながら、自分が納得いく条件で交渉する。こういった対応も必要なのかもしれませんね。
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は取り込み詐欺についてまとめてみました。ジェネラティブアート。あ、一応この言葉の定義も確認しておきましょう。厳密には下記の意味のようです。
参考
ジェネレーティブアートまたはジェネラティブアート(英: Generative Art)は、コンピュータソフトウェアのアルゴリズムや数学的/機械的/無作為的自律過程によってアルゴリズム的に生成・合成・構築される芸術作品を指す。コンピュータの計算の自由度と計算速度を活かし、自然科学で得られた理論を実行することで、人工と自然の中間のような、統一感を持った有機的な表現を行わせる作品が多い。
引用: Wikipedia
今回の物語の青年ジェネラの作品は全てハンドメイドでしたが、自動化されたARTも素敵ですね。NFTARTは成功してからがより本格的にブランド価値を構築していくものと思いますので、詐欺に合わず、ブランドが成功し、さらには発展を遂げる。こんな素敵な物語が皆様のブランドで起こることをお祈りしております。
ということでウルスでした。最後までお読み頂きありがとうございます。Have a Good Defense!
2022年夏の夜 ウルス